検索ブロック指定

一般的に、grep 系のツールが検索の対象とするのは「行」です。しかし、扱いたい情報の単位は行とは限りません。greple は、検索対象とするデータの単位を柔軟に指定することができます。

–all

--all は、ファイル全体を検索単位とするオプションです。

このオプションが有効なのは、当たり前ですが、ファイルの内容を全部見たい場合です。

寿司セットの中には魚介類以外のネタとして「サラダ」「アボカド」「うどん」があって、すべてを AND で指定すると、そのすべてを含むセットはありませんが --all を指定すれば全体を眺めることができます。

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対象が原稿であれば、注目する部分をハイライトして、全体を眺めたいような場合に有効です。

ファイル名のみを表示する -l オプションと組み合わせて使用すると、指定したワードをすべて含むファイルを探すことができます。検索エンジンと同じような使い方です。

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-p, –paragraph

-p (--paragraph) オプションを指定すると、行ではなく、空白行で区切られたパラグラフを単位として検索を行います。複数キーワードの処理も、行ではなくパラグラフ単位で行われるので、指定したワードは同一行に含まれる必要はありません。

次の例では AND, OR, NOT, MUST という単語がすべて含まれるパラグラフを検索しています。

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デフォルトでは、ファイル名は grep と同様にすべての行に表示されますが、--filestyle=once というオプションを指定することで、最初に一度だけ表示しています。

–block

--block オプションでパターンを指定すると、それにマッチする部分が検索単位となります。次の例では git のソースコードから、Cのコメント部分 (/*...*/) をブロックとして指定して UTF, Unicode, BOM という単語がすべて含まれるブロックを検索しています。

greple --border '(?s)/\*.*?\*/' --fs=once -i 'utf unicode bom' *.h

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この場合、検索対象のブロックは連続していません。ブロックに相当しない場所でのマッチは無視されます。

–border

--border オプションには --block と同じようにパターンを指定して、それを元にブロックを作りますが、--block と違い、マッチの始点と終点を境界とする連続したブロックを作ります。

デフォルトの行単位での挙動は --border=^ を指定したのと同じで、パラグラフモードは連続する改行文字 --border='\n\n+' を指定したのと同じです1

次の例は、シャープ (#) で始まる行の行頭にブロック境界を設定します。つまり、# ではじまる行から次の行頭の # までの、マークダウン形式のパラグラフがブロックとなります。

greple --border '^(?=#)' PCRE *.md --fs=once

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-A, -B, -C

-A (after), -B (before), -C (context) オプションは、検索行の前後を同時に表示するためのもので、grep とほぼ同様に使うことができます。次の例は、マッチした前後1行ずつを表示しています。

greple -n -e びんちょう sushi.txt -C1

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この前後コンテキストも、指定したブロックに対して適用されます。ですから、パラグラフモードであれば、前後のパラグラフを一緒に表示します2

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この時、検索ロジックもコンテキスト同様に拡張されます。次の例で、最初のコマンドではびんちょうサラダを両方含むセットは見つかりませんが、次のコマンドは -C1 でコンテキストを前後に1行ずつ拡張することで、条件を満たすデータが発見されます。

greple -n -e びんちょう -e サラダ sushi.txt
greple -n -e びんちょう -e サラダ sushi.txt -C1

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まとめ

greple の検索単位を指定するブロック機能について紹介しました。テキストファイルであっても、行単位で情報が管理されていることはむしろ稀です。処理対象の情報単位を柔軟に設定することで、論理的に意味のあるデータブロックに対して検索等の操作をすることが可能になります。

今回紹介した単純なパターンマッチによる方法では処理できないような複雑なデータ形式もあります。そのような場合には、また別のアプローチがあります。

SEE ALSO

https://qiita.com/advent-calendar/2021/greple

  1. https://qiita.com/kaz-utashiro/items/5b6bcbe54891b3bd9db5
  2. https://qiita.com/kaz-utashiro/items/eb8c7067e6de34842fe3
  3. https://qiita.com/kaz-utashiro/items/165e744d4250adedc4c1
  4. https://qiita.com/kaz-utashiro/items/439e6abcecf36c520703
  5. https://qiita.com/kaz-utashiro/items/24ac0b8fdd30b598e069
  6. https://qiita.com/kaz-utashiro/items/a1ba4e3d07cf37dc25e3
  7. https://qiita.com/kaz-utashiro/items/0c8c944c17a72724b771
  8. https://qiita.com/kaz-utashiro/items/8783c2fd0cc4315b9a3d
  9. https://qiita.com/kaz-utashiro/items/84f5a6be6bf996076c64

  1. 簡略化して書いています。実際に使っているパターンは (?:\A|\R)\K\R+ というものです。 ↩︎

  2. -C オプションのデフォルトは2です。-p オプションを使った場合、空白行の部分も1パラグラフを構成します。したがって、このように前後1パラグラフずつを表示しているように見えます。 ↩︎


Last modified April 24, 2023: update submodules (e4ab308)